福岡県 小石原川ダム

Photo

堤体

2022/01/23 - 福岡県朝倉市江川 (場所以下同様)

 ・全体図


2021年10月より本格運用開始された福岡県最新かつ水資源機構のダムです。

下流には、「江川ダム(こちらも水資源機構)」があり、さらには一つ山を隔て「寺内ダム(もちろん水資源機構)」もあって、「あさくら3ダム」と総称されています。


2023/02/03 - ※ダム見学会において許可を得て撮影しています。



これらのダムは、導水トンネルを活用することで総合的に運用管理されており、
治水はもちろん、福岡導水を通して福岡都市圏への重要な水道用水としても重要な役割を果たしています。

こちらの堤体は寺内ダムと同じく「ロックフィルダム」。高さは139mあり、これは「九州一の堤高」を誇ります。

また、五ケ山ダム同様「ゲートレス式の多目的ダム(治水兼利水)」になっています。




堤体上には無数に観測計が設置されていました。これらの観測計の詳細ですが、


2023/02/03 - ※ダム見学会において許可を得て撮影しています。




GNSS(位置情報システム)などを活用して「貯水池の水圧差によって堤体のズレ等がどのくらい出るか?」などを測っているそう。

・・・って、こんなに変位するもんなんですね。


 ・エスカレーター?



エスカレーターっぽい見た目ですが、前例の少ない「階段式洪水吐き」になります。

通常はスロープ形状で造られますが、この洪水吐は段差によって連続的に減勢させます
これにより「洪水吐」や「減衰池」などは、従来に比べ小型化に成功しています。



洪水吐上端は中央が常用洪水吐(EL349.1m)2門、右が非常用洪水吐(EL353.0m)でいずれもゲートレス(自然越流)式です。


 ・監査路

2023/02/03 - ※ダム見学会において許可を得て撮影しています。



天端の右岸側にある建物よりエレベーターに乗って、監査路を進みます。



堤体内部は貯水池の水圧によって僅かに漏水しており、その量を図るための計器類があります。
見回り点検では「適切な量(異常出水はしてないか?)」かチェックをし、ダムの健康状態を日々管理されています。




監査路は階段もあり、全体を巡るように作られてるので長い距離がありました。


 ・利水室

2023/02/03 - ※ダム見学会において許可を得て撮影しています。


広大な空間には、主に「利水放流バルブ設備」「小規模水力発電設備」が置かれてます。



この日(ダム見学会)は、外に雪が残るほど寒い時期でしたが、堤体内は暖かく快適。





配管のボルトナット部にはマーカーが塗られており、「緩みがないか」目視で確認できるようになっています。



利水バルブの「分電盤」及び「操作盤」。
何を示す物なのかよく解っていなくても、色々光ってるのを見るとなんか興奮しますよね(変態)



小規模発電設備は、利水放流時のエネルギーを活かし使われています。
説明書きでは「一般家庭1000戸分(最大)」の発電能力があるそう。



発電機。小規模発電なだけあって、かなりコンパクト。



天端

2022/01/23 -


天端は幅広の道になっていますが、車両通行止です。





天端の柵には、地元の方の切り絵作品が等間隔で展示されていました。



選択取水設備

2022/01/23 -


堤体とは、別の場所(右岸側)に設置。地山設置型の選択取水施設です。


2023/02/03 - ※ダム見学会において許可を得て撮影しています。



1枚目は「選択取水設備」の詳細、2枚目はダム管理所の方より、設置工事中の写真を特別に見せて頂きました。

これらを見ての通り「円形多段式ゲート」が採用されています。
取水範囲は70m弱あって「国内最大級(※円形多段式ゲートとして竣工時)とのことです。


監視ボート乗り場


2022/01/23 -



ダム湖

2022/01/23 -




「令和あさくら湖」

令和の名前が付くダム湖はここが初にして唯一でしょう?

総貯水容量は4,000万立方メートル(うち有効貯水容量は3,910万立方メートル)を誇り、この貯水には「洪水対策・河川維持ほか・上水道用水・渇水対策※(FNWU)」の4つの目的があります。
元々渇水対策容量は無かったのですが、五ケ山ダムに次いでこちらも採用されたみたいですね。

※大きな周期で訪れる渇水時期を見越して設定されている利水用の容量。


曝気装置

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貯水池に酸素を補給するための設備です。



下流

2022/01/23 -


ダム直下。左右とも大規模に法面整形されています。
また、写真左奥に見える池は江川ダムの「秋月湖」になります。



管理所

2022/01/23 -




0900-1700までの間は、ダムカードの発行(福岡県ダム印張持参の方は記帳)が基本可能です。※パトロール等で不在時および国や県の警報発令時などは対応頂けない場合もあります。

管理所には、広めの駐車場とロードバイク用のスタンドが設置されていました。また管理所屋外にお手洗いもありました。
その為、ウォーキングなど運動目的で来てた人も多かったです。


2023/02/03 - ※ダム見学会において許可を得て撮影しています。





中々お目にかかれない管理所内、各種データやカメラ映像を表示する大画面モニターをはじめ、バルブ操作等を行う操作盤までずらっと揃ってます。

洪水調整については自然越流式の為、操作機器類はコンパクトになっている印象です。



記念碑

2022/01/23 -






Specifications

   河川名  : 筑後川水系 / 小石原川 [1級河川]
   目 的  : FNWU (洪水対策, 河川維持, 上水道用水, 渇水対策)
   型 式  : R (ロックフィルダム)
   ゲート   : ゲートレス (自然調節方式)
   堤 高   : 139.0m
   堤頂長   : 553.0m
  総貯水量  : 4,000万㎥
  ダム湖名  : 令和あさくら湖
   管理者   : 水資源機構
  本体着工年  : 1992年
   完成年   : 2021年
  ダムカード  : ○(08:00-17:00, 公式ダムカード) ※年末年始や感染症対策で配布してない可能性がありますのでホームページをご確認下さい。福岡県ダム印帳の記帳は管理所で可能です。(←現在管理所での記帳は終了しています)
  ホームページ : 水資源機構小石原川ダム管理所





Location

所在地   : 〒838-0012 福岡県朝倉市江川2815

※上記情報はダムカードや小石原川ダム管理所公式ページ様等を参考にさせて頂いています。





Impression

堤高が九州一のダムで、総貯水容量も五ケ山ダムの次に大きいダムになります。
容量の大きさは五ケ山とさほど変わりませんが、五ケ山より約36m高い分貯水池面積はコンパクトに感じました。

あさくら3ダムでは誕生したばかりの末っ子になりますが、福岡都市圏を中心に人口は増加の一方で天候も不安定な昨今。
「大きな貯水池と、渇水対策機能をも確保している小石原川ダム」の色々な活躍が期待されます。





2025/07/24 2022年度に開催された「(福岡県)ダム印帳特別ダム見学会」へ招待された際に撮影した写真等追加しました。
2022/02/15 記事を公開しました。

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